本書について
すべてはひとつの思いから始まります。既存のバンドに加わりたい、あるいは新しいアンサンブルを結成したいのかもしれません。演奏をまったく新しいレベルへ高めたいのかもしれません。
かかわる各システムを新たな目で見直し、それらをらくに連動させられるようにしましょう。

- 垂直軸システム:足から頭まで、骨盤と脊柱を経て
- 水平軸システム:二つの肩甲骨と二つの鎖骨からなる肩甲帯
- 手のシステム:上腕、前腕、手
- 呼吸システム:横隔膜と骨盤底、腹筋と殿筋
- 振動体システム:喉頭(のど)の中、気管のすぐ上にある声帯
- 共鳴体システム:のど/咽頭と口(声道)、軟口蓋
- 構音システム:舌
- 表情システム:顔と唇
- 意図のシステム:音楽と芸術的感覚、感受性。
よりはっきりと視覚化し、感じる
序文:Alexinho(ビートボックス世界チャンピオン)

私にとって、ヒューマンビートボックスは謎に満ちています。
音は本当はどこから来るのか? どのように生み出されるのか? どんな手段で? どの筋肉や関節がかかわっているのか?
私の手が届くのは、身体で感じていること(唇、声、息、舌など)に基づいた、ほんのいくつかの「基本的な」知識だけです。
でも解剖学者ではないので、たくさんの疑問がわいてきます。
そうした疑問を抱いているのは、きっと私だけではないでしょう。
私の学びの源は、さまざまなビートボックスのイベントでの交流や出会い、会話だけです。
身体という名のこの機械がどう働くのかを本当には知らないまま、新しい音を見つけることを目的のひとつとする(アンダーグラウンドな)シーンに身を置くことは、私にとって問いでもあり、偉業でもあります。
実際、ヒューマンビートボックスの謎の多くは、私たちの肉体、有機体、顔立ち、そしてそれ以外の多くのものに由来しています……
それなのに、私たちはそれについてほとんど何も知りません。
今日のビートボクサーは、まさに表情筋のアクロバットです。
だからこそ、私たち「パフォーマー」である音楽家は、できるだけ早いうちから、もっとも適切なやり方で力の使い方を管理することを学ぶべきなのです。エネルギーを温存し、長く続けていけるように。
この本は、私たちみんなが持っているこの生きた楽器を理解するための、基本的な鍵を与えてくれます。
声のアーティストに役立つものは、この芸術の伝え方についての知識を深めたいと願う教師にも、同じように役立つでしょう。
Alexinho – ビートボクサー、ビートボックス世界チャンピオン
序文:Nathalie Solence
歌手 – シンガーソングライター

作詞作曲した自分の歌を歌うために、初めて舞台に立った日のことを覚えています。二十歳になったばかりでした。それはひと目ぼれでした……。すぐに自分の居場所だと感じられる空間との出会いだったのです。それまでの数年間、ギターの試験で指が震えるという苦い経験をしていました。でもその日は、あがっていても、胸の中で心臓が早鐘を打っていても、声は震えませんでした。言葉も音もそこにあり、つかえることも、記憶が飛ぶこともありませんでした。最初の瞬間から、幸福感と高揚感と力強さに満たされて……。周りで世界が崩れ落ちてもかまわない、私は耳を傾けてくれる聴衆の前に立っているのだから! そしてすぐに、一刻も早くまた舞台に戻りたいという気持ち。水に飛び込んで、水の中で初めて自分が魚だと気づいた、とでも言えばいいでしょうか!
今でも舞台は、私にとって特別でかけがえのない場所です。世界に開かれた空間であると同時に、まったく親密な空間でもあり、そこではどんな自由も可能です。その点で、書くことに似ています。ただ、書くときは自分ひとりきりですが、舞台ではみんなと一緒にひとりきりになるのです! そこは、「他者」であると同時に「深く自分自身」でもあると感じるといった、ほかの対立するものが出会う場所でもあります。
私が歌いはじめたのは、ただ自分が書いた歌を聴衆と分かち合いたかったからでした。テクニックもなく、声も、姿勢も、演技も磨かないままに……。そして歌から歌へ、舞台から舞台へと重ねるうちに、気づけば歌手になっていたのです……
私は歌う……
灰色の時間を着飾らせ/空を青く染めるために
瞬きひとつでヴェネツィアへ/雨の日に太陽を感じるために
夜が来たら酔いしれて/もう狼を怖がらないように
森の奥で、井戸の底で/何かのために、何でもないことのために……
その後、私はあらゆる種類のレッスンを受けました。歌、演劇、マイム、クラウン、解釈……。舞台で「動く」こと、「話す」こと、呼吸すること、歌うことを、自分で鍛えていったのです! 声には何度か意地悪をされました。声の専門医や言語聴覚士にもかかりました……。声に耳を傾け、声を感じ、声が疲れていくのを聞き取り、声を酷使しないことを学びました。ある意味で、声を使いこなすことを。そして自分の弱さと強さを含めて、自分自身をよりよく知ることも学びました。Marcは、心と感情と結びついた身体のしくみに根ざした、探究に基づく取り組みを私に提案してくれました。
『音楽家の解剖学』。この本はそのタイトルにふさわしい一冊です。それでも、私を待ち受けていた冒険がこれほど胸躍るものであり、同時にこれほど複雑なものだとは思ってもみませんでした! これを読むのは、まさに海の底の生命を発見しに出かけるようなものです!
けれども、ページごとに美しく図解された記述、いや解剖にとどまらず、集められた驚くほど豊かな情報にとどまらず、彼の探究と私たちに伝えてくれる情熱にとどまらず、Marc Papillonは、私たちの動きの起源と影響を意識させてくれます。ある痛みがどこから来るのかを理解する助けとなり、構えや動きや呼吸を自分の必要に合わせて調整する助けとなってくれます。さらに、困難が生じたときに余計な不快感に押し流されないよう、身体的に「まとめる」ことのできるものを「まとめる」ための「鍵」も与えてくれるのです。
私にとって、それこそが受け取った本質です。そして忘れてはならないのは、結局のところ、彼の探究の中心にはいつも、芸術、音楽、学ぶ喜び、演奏する楽しみ、そしてもちろん、本質的に不完全な人間がいるということです。
追伸:聞いたこともなかったいくつかの筋肉の名前に、私は夢をかき立てられました……。おいしい料理の名前? それとも険しい岩峰? 結局、私は山歩きを選び、遊び心でこんな数行を書きました。
大いなる前鋸筋の頂に登り、
後ろの斜面を下りて、さあ
小円筋の凍てつく水に足を浸そう……
日なたで憩い……額を陰で守り、
帽状腱膜を咬筋まで登り、
菱形筋を駆け下りて、ひと息つこう、
そこで小指球猊下にご挨拶し、
芸術通り、腰方形筋広場で夕食を。
Nathalie Solence – 歌手 – シンガーソングライター
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音楽家の解剖学
図版入り、290ページ。
Marc Papillon Éditions – 2022年
